風の便り episodo.46 


甲州道中 八王子
 八王子
 甲州道中は、中央本線を使っての旅になる。主に神奈川県を住処とする我々は、道中の終わりには八王子で解散ということが多く、そこで風呂に入り打ち上げの一杯をやってきた。北口は近代的に開けた町で、居酒屋は多いがチェーン店の聞きなれた店ばかり、我々おじさんたちには落ち着かないところと感じ、もっぱら南口を攻めることとなった。野猿街道も通る南口は、当時まだまだ開発の手が伸びておらず、昔の街並みが残るローカルな街であった。
 街道を歩き終えた我々は、中央本線の普通列車で八王子まで戻り、南口の銭湯で汗を流し、周辺の居酒屋で喉を潤し、その日を振り返ったものである。そんなことを何回も繰り返すうちに、八王子が自分の街のような錯覚に陥ってしまった。数ヶ月ぶりに南口へ降りると、ホッとするのが不思議である。
 居酒屋はもちろん自分の街になじみの店も有るのだが、こうして旅の途中で寄る店は、また格別のものがある。もちろん隣に座った客は地元の人(多分)、その中に混じりあたかも八王子の人間のような顔をして酒を飲むのも旅の醍醐味と感じた。
 甲州道中も終わり、もう八王子で飲み機会もなくなってしまったが、またあの銭湯で汗を流し、あの椅子に座ってみたい。

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