風の便り episodo.38 


甲州街道 笹子駅
捨て猫
 我が家にはかつてチャーとグーという猫がいた。雑種の姉妹で茶色と白がチャー、灰色と白がグーという訳だ。彼女たちは長男が幼稚園を卒園するとき先生から譲り受け、その後16年間も我が家のマスコットであった。
 犬好きで猫嫌いのパパであったが、彼女たちの仕草に魅了され大の猫好きとさせられてしまった。そんな彼女たちも晩年は年老いたボクたちのおばあちゃんの心の支えとなって活躍してくれた。この猫を見ると、そんな姉妹が我が家にやって来た時のことを思い出させてくれる。
 甲州街道を今日は笹子峠を越え勝沼まで歩こうと、早朝の列車で笹子駅に降り立った時、この猫たちに出会った。自動販売機の陰に隠れミャーミャーと鳴く2匹の子猫たち、無人駅の笹子駅では飼われているはずもなく、間違いなく捨て猫である。この日は11月も押し迫った寒い朝、お腹が空いた猫たちは必死に母親を捜している。列車を降りてきた同好の士たちも、この現状に驚き自分たちの食料の一部を与えている人もいる。
 先日フジテレビの番組「アンビリバボー」で中国・浙江省・西湖にある断橋での奇跡を紹介していた。ご覧になった方も多いことであろう。そこでは、中国の一人っ子政策のため、泣く泣く次女を市場に捨て、そのおくるみの中に「もし叶うなら10年後、20年後の七夕の日に、この断橋の上で逢いたい」という手紙を入れた。10年後の今年奇跡的に消息が判明したが、里親の意志で逢うことが叶わず、もし番組が更に10年続けば、感動が待っているという内容であった。
 そんな番組を見ているときにフッと思い出したのが、この子猫たちであった。これから冬に向かい彼らが生き延びられる確率は低く、街道歩きをやめ連れて帰りたい衝動に駆られた。誰もがこの場ではそんな気持ちになったことは確かだが、実行に移そうとした者はいない。捨てた人間を責めるわけでもなく、救ってあげられない自分に自己嫌悪を感じながらの辛い旅立ちになったのは確かであった。
 

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