風の便り episodo.31 


中山道 新宿駅にて
あずさ2号
 あざさ2号以前に新宿のホームには数え切れない思い出がある。23時56分発普通列車長野行。この列車に何度乗ったか分からない。学校を午後からさぼってホームの新聞紙の上で半日過ごしたり、突然、キャベツ一つ持った仲間が、俺も連れて行けと現れたこともあった。発車前にすっかり酔って、甲府の長時間停車ですっかり目が覚めてしまい、翌日の登攀に苦労したり。
 この列車は、電車ではなく列車だった。電気機関車が数十両の客車を曳いて新宿駅を出発したなど、今では考えられない。エアコンのない天井は異常に高く、仲間は網棚やシートを外して床で寝ていた。立川を過ぎると照明が落とされ、本格的睡眠に入る。もちろん、岡谷からは辰野を回って松本へ。松本電鉄のホームへ全員がダッシュ。そして新島々から上高地へ。
 かいじ、あずさが走る新宿駅コンコースを、中山道へ向かうため歩く。新宿から始まり、世界の山を目指した若者が、こうして2世を背負いこの同じコンコースを行く。まるでタイムマシンの様だ。背負われている彼らにも、彼らの新宿駅が形成されるだろう。それがどんな新宿なのかは、私には分からない。

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