風の便り episodo.29 


中山道 野尻宿にて
会話
 中山道のベテラン平次は、実に面白い特技を持っている。初対面の人との会話が実に巧みなのである。この日も自宅の前でちょっとした作業をしている人を見つけ、早速”会話”が始まった。「おじさん何してるの?」、困ったのは聞かれたおじさん、説明のしようがない。しかし相手は幼児、どう対応して良いか思案していると、すかさず「おじさん一人?」と来る。彼の話術にかかると、どんな強面の人も、ツッパってるお兄さんも、ガングロのお姉さんも、たまったものではない。
 そもそも、スローペースな旅の醍醐味は、出会いと会話かもしれない。ともすると、その日の予定が気になり、気もそぞろに先を急ぐのが大人である。見ているのは、地図と景色とファインダー。彼のこんな特技を目の当たりにすると、旅の原点を思い知らされる。大人たちが、いかに子供たちのためにと思い旅を演出しても、そんなものはどこ吹く風。こんな光景に出会うと、彼ら子供たちが、この旅を演出してくれていることに気付く。気が付いたら、すっかり大人になってしまった自分がちょっぴり悲しい。

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