風の便り episodo.28 


中山道 大桑駅にて
待合室
 久しぶりに、駅の待合室で時間を潰した。ストーブの暖かさと昔ながらの大きなベンチ。福島で出会った日本縦断のサイクルおじさんは、よく駅の待合室に泊まらせてもらっていたが、最近は閉め出されてしまうことが多いと嘆く。夜行列車で着いた人が始発のバスを待ったり、始発の列車を待つ間見知らぬ人と話が弾んだりと、昔の待合室には独特の雰囲気があった。
 学生時代、塩山で始発のバスを待つ間、ホエーブスに火を入れ朝食に有り付こうとしていた山岳部員の耳に、女性の声で「臨時のバスが出ますので、ご乗車される方はお急ぎ下さい」というアナウンス。慌てた部員がガス圧を抜こうとした途端、噴出したガスに余熱が引火、待合室はパニック状態となってしまった。その時、慌てずに火の中に手を突っ込みバルブを閉めた先輩の行動こそが、山登りの基本ではないかと感じた。
 あれから30年、暖かいストーブを囲んで、こうして列車を待っていると、家族がいること、中山道を歩いていること、そしてタイムスリップしたような待合室があったこと、全ては一瞬の夢の中の出来事のように感じてしまう。そんな時空を越えて存在するのが、駅の待合室。貴方にはどんな幻が有るのだろうか。

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