風の便り episodo.21 


蒸気機関車

 この蒸気機関車は,中山道御代田駅のそばにあるD51787だ。真っ赤にさび付いていたものをレストアしている最中とのこと,皆さんが行く頃には,走れるまでに復元されるそうだ。
 私が最後にSLに乗ったのは数十年前の横川〜軽井沢間だったと思う。あのトンネルだらけの急坂を煙を大量にはいて行くものだから,乗客はたまらない。窓を閉め忘れようものなら,他の乗客から罵声が飛んできた。それでも軽井沢に着く頃には,誰の顔も煤だらけになったものである。列車の最後部は,連結用の通路がそのままオープンになっていたので,そこからの景色がまた楽しいものであった。もちろん手を離せば線路に落ちるのだが,昔の腕白にそんなどじな奴はいなかった。みんなでデッキの手すりに掴まって,外に身体を乗りだして遊んだものである。頭上をたなびいていた煙がトンネルに入った途端,目の前で渦を巻く。そのときの石炭の独特の臭いが,今でも鼻の奥に残っている。この御代田のD51の運転席に登ったとき,鼻が昔の碓氷峠へ連れて行ってくれた。

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