風の便り episodo.16 


愛知県岡崎市宇頭駅


 東海道を京都に向かって上る場合,車を使うと面白いことが起こる。
その日の目的地まで車で行って,そこに車を置いて歩く出発地点まで電車を使って戻ることになる。それを繰り返すと,結局京都までの道のりを電車で逆走することになる。電車の中では,これから歩く道,また今日歩いてきた道を車窓から見つけては,いい大人が窓の外を見て大騒ぎなので,きっと乗り合わせた一般客から見たら奇異に見えたことだろう。
 その日の目的の駅に着いたときの喜びはひとしおである。もう二度と乗車することもないであろう駅である我々と,毎日通勤通学でなじみのある駅であろう彼らが,同じ空間を共有したとき,タイムスリップしたような錯覚に陥る。彼らの目にも我々は異質に写り,正直な子供や学生は,まるで宇宙人でも見ている顔つきになる。きっと時間を共有していない事を鋭く見抜くのであろう。夕焼けの知らない駅で,ポカリスエットを流し込みながら列車を待つひとときが私は大好きである。

戻る