風の便り episodo.7 

芭蕉

 都営新宿線の森下駅を降りて,隅田川へ向かうと芭蕉記念館がある。ここに庵を結び,最後の旅へと出発したという。我々街道の旅人にとって彼は,至る所に出没する宇宙人だ。川崎の八丁畷で弟子と別れを惜しんで東海道を下ったり,
藤川でむらさき麦の歌を詠んだり,石薬師の杖衝坂で馬から落ちたりと。本当に芭蕉は一人の人間だったのか。もしかしたら芭蕉という名の人物が何人もいたのではないかと,疑ってしまう。実際,伊賀上野の生まれの彼は素破との噂も。
 しかし,街道の達人としての彼を尊敬せざるを得ない。東海道から中山道へと向かった私にとって,奥の細道という魔物が手招きしている。旅に生きる。それこそが,彼の人生だったが,バーチャル,リアル。どちらを取っても人間旅に生きているのではないだろうか。街道を歩いていると,現代人に姿を変えた芭蕉が,すれ違いざまににっこり笑う!


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